2015年10月7日水曜日
幽霊の家
「彼の気の優しさ、育ちの良さはいっしょに町を歩いているだけでよくわかった。たとえば公園を歩くと、風に木がざわざわ揺れて、光も揺れる。そうすると彼は目を細めて、『いいなあ』という顔をする。子供が転べば、『ああ、転んじゃった』という顔をするし、それを親が抱き上げれば『よかったなあ』という表情になる。そういう素直な感覚はとにかく親から絶対的に大切な何かをもらっている人の特徴なのだ。」
「冬の曇り空ってなんていやらしいんだろう、雲の厚みやグレーの空や、吹き渡っていく風。全てが人と肌を寄り添わせるために設定されてるとしか思えない。永遠に続く灰色の中で、部屋にずっといたい。部屋の中で、ずっと誰か他人と、果てしない肉欲の中にくつろいでいたい、そこしかくつろげるところはない、そういう感じがした。」
『しいて言えば、顔も性格も、知っている女の子の中で一番好き。』
『先々のことは考えられる状況じゃないもの。でも私は今、たまたまフリーだし、ここには確かに穴があるし。』
『いいの?』
『いいのって聞かないでよ。私のせいにしないで。』
「この他にはない組み合わせの妙を、このちょうどよさを確かめるためにこの行為はあるんだ、と私は思った。どこも痛くなく、どこも当たらず、お互いがいい思いをして、いつまでも続けたいと思うところで終わってしまうから、またしてしまう、そういう仕組みなんだ。それがわかった瞬間だった。」
『帰る家があるのに、愛されているのに淋しい、それが若さというものかもね。』
友人から間違えて2冊買っちゃったからあげると言われて、初めて読んだよしもとばなな。
私、感想を文章にするのが苦手で、気に入ったところだけを抜粋してメモをとったりするのだけど、その長さからもわかるように、いろいろ説明しちゃう人なんだなーって思った。
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