2015年10月7日水曜日

淋菌



「ポテチからマック、マックからケンタ、ケンタから海老天丼。どんどんエスカレートしていった挙げ句辿り着いたのは、餃子の王将だった。中華の臭気漂う店内、メニューを開いてパッと飛び込んできた油淋鶏。まず、名前に衝撃を受けた。

 油まみれの、淋しい鶏・・・・・・・。

 思わず注文し、やってきた油淋鶏は、鋼鉄の衣で身を覆い、更にそのうえから刺激的な赤黒いタレをまとっていた。まるで近づくなと言わんばかりである。カルシウム不足の歯で必死に噛み砕くと、なかには真っ白な鶏肉が待ち受けており、涙のような油を垂らしながら、ずっと淋しかったと言った。

 鶏は淋しかったのだ。あの衣とタレは、淋しくて淋しくて、ビョウつきのライダースをまとい、タバコをふかし、いかついバイクにまたがった不良少女の虚勢を同じだ。

 私も淋しかった。淋しいから、ここに来てあなたと出会った。咀嚼しながら、手を取り、語り合う。血のにじんだ歯茎は、友情の証のタトゥーのようなものだ。」


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