「あらしのせいでみんなふあんなんだよ。たかいたかい、ぶらんこのうえのわたしたちみたいに、あんぜんじゃないからね。かぜがふけばふきとばされる、かじになればくろこげにもえちゃう」
「あなた、手をにぎっていてくださいな」
だんなさんはしんぶんをたたんでせすじをのばし、おおきくぶらんこをゆらしておくさんのほうにふった。いちど手をにぎり、はなれていき、またちかづいてにぎり、そうしてはなれた。
「あなた」
とおくさんはさかさになったままいった。
「わたしたちはずっと手をにぎってることはできませんのね」
「ぶらんこのりだからな」
だんなさんはからだをしならせながらいった。
「ずっとゆれているのがうんめいさ。けどどうだい、すこしだけでもこうして」
と手をにぎり、またはなれながら、
「おたがいにいのちがけで手をつなげるのは、ほかでもない、すてきなこととおもうんだよ」
ひとばんじゅう、ぶらんこはくりかえしいききした。あらしがやんで、どうぶつたちがしずかにねむったあとも、ふたりのぶらんこはまっくらやみのなかでなんども手をにぎりあっていた。
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