2014年1月23日木曜日

フライング


まだ読み終わってないけど 最高すぎて これからもまだまだ続くよ





「そこらへん難しいのかもね、とか言って、そんなの私には分かんないけど。そういう、難しさみたいなもの」と美世子ちゃんが言う。「小説とか書いたことないから」
「実際やんなくても想像してみりゃいいじゃん」と慶喜君が言う。
「なんでそんなすぐ難しいから分かんないとか言うんだよ」
「え、ごめん……」
「ごめんとか言ってほしいんじゃないの。なんですぐ謝んだよ。何も悪いことしてないっしょあんた」
「だって……」
「俺がちょっと怒ったっぽいからだろ。だから俺の顔色見ながら謝られてもしょうがないし。それ反省生まねーじゃん、今度は俺を怒らさないでおこうってだけでしょ、そっから出てくるの。そんなのいらねーって」
「うん、分かってる」
「ホントに分かってんのかよ」
「分かってるよ。だから怒んないでよ。怒られると怖くてうまく考えられなくなるんだもん。」
「怒ってないよ、別に」

慶喜君もハハハと笑うけど、その笑いの奥に怯えがある。自分の言葉や雰囲気や表情や、その存在自体が、誰かをこんなにも脅えさせ、かつ惹き付けておくなんて、という戦き。それも隠したくて、とりあえず慶喜君もハハハと笑う。

0 件のコメント:

コメントを投稿